離婚した後、子供と一緒に今の家に住みたい!と思っても、本当に家を買い取って住宅ローンを組んでもいいのか・・。
大きなお金を借りることに不安がありますよね・・。
私は、銀行の融資担当の時に様々なお客様から、住宅ローンのご相談を受けました。
それでも、自分が離婚をして家を買い取ると決めたときは、本当に大丈夫かな?と不安でいっぱいでした。
マイホームでなく、賃貸でもいいのではないか・・というご意見も最近は多い印象です。
マイホームを買うことと賃貸で家を借りるということは、住む場所を決める上でとても重要ですが、それぞれ全く別の性質のものです。
では、どのように考えると、自分の環境に沿った選択ができるのか。
すこし、面倒ですけど、考え方さえわかれば自分の最適な道が見えてくると思います!
賃貸にしかないメリットとデメリット
賃貸に住むということは、当たり前ですが、「誰かの所有している家に、家賃を払い借りて住む」ということです。
メリットは、 いつでも引っ越しができて、固定資産税や修繕費(故意に傷つけたものは自分で払わなくてはいけませんよ。)はかからない。
デメリットは、 勝手に修繕ができないことや、家賃を払っていても自分の資産にはならないこと。
こう考えると、賃貸にしかないデメリットはあまりないと言えると思います。
マイホームを買い取りたい(買いたい)と思ったら、決断する前にやること
マイホームを買い取るかどうかは、その人の生活や、その土地の環境など様々なことを総合的に判断して、買い取るかを決める必要があると思います。
買い取りたいという希望と、本当にその選択肢で後悔しないかをしっかりと考えてほしいと思います。
どんな選択肢があるか、一度考えてみる
マイホームを買い取る以外に、選択肢を先に考えます。
もし買い取れなくても、賃貸に住むことや実家に頼ることなどです。
マイホームを買い取るときには、考えることがたくさんあります。
その前に、例えば賃貸なら、住みたい場所の家賃がいくらなのか周辺の賃貸情報をチェックしておきます。
また、実家に頼るなら、住まわせてもらえるか今の段階で親に聞いておくなどして、マイホーム以外の選択肢をしっかり把握してください。
その上で、時間をかけて考えることが大事です。
家は資産、住宅ローンは負債と考え、バランスを見る
マイホームを買うと言うことは、まず「借金して(住宅ローン)、家(資産)を持つ」とことになります。
そして、その「買った家に住む」という考えの方がしっくりきますね。
ですから、「買った家に住む」を考える前に、マイホームを持つ=住宅ローンを組むときには、負債(ローン)と同時に資産(家)を持つ。という観点を持つといいと思います。
短期のことではないので、長期で考える必要があります。
住宅ローンを組む=負債を○○万円かかえ、毎月△万円□□年間返済する。
家を買う=○○万円の家という資産を持つ、将来△年後には□□万円くらいの価値であるだろう。
というイメージに持っていきます。
損益計算書(P/L・・家計簿のようなもの)と貸借対照表(B/S・・もっているお金と借りているお金のバランス)で考える
会社の決算書という言葉を聞いたことがあると思いますが、決算書の内容は主にこの損益計算書(P/L・・家計簿のようなもの)と貸借対照表(B/S・・もっているお金と借りているお金のバランス)2つの表から作られます。
会社の成績と持っている負債や資産が一目でわかる表です。
これを、家計や資産の把握に当てはめるとわかりやすいです。
今の家計の収支は?
まず、マイホームを買い取ったときの損益計算書=家計簿はどうなるのか考えます。
毎月の家計簿(収支表)をエクセルなどで作ります。
実際には、離婚後に収支の内訳は変わってくるので、マイホームの件に関わらず家計の収支表は必ず作った方がいいと思います。
現在の住宅ローンの返済金額で離婚後の収支表を作り直します。
マイナスでも今は気にせずに、「住宅ローンの返済が今と変わらなければ、こんな感じの家計簿になるなぁ」とわかっていれば大丈夫です。
給与 | 200,000 |
養育費 | 100,000 |
児童手当 | 10,000 |
収入合計 | 310,000 |
住宅ローン(家賃) | 80,000 |
食費 | 50,000 |
水道光熱費 | 15,000 |
教育費 | 90,000 |
その他 | 50,000 |
支出合計 | 285,000 |
収支 | 25,000 |
こんな感じで、アバウトで大丈夫です。
随時見直しすればいいので。
収支表を作ったら、収支がマイナスなのかプラスなのか・・それはどのくらいなのか把握します。
その上で、時間があれば同時に家計の見直しをしちゃいましょう。
後回しでも大丈夫です。
もし賃貸に住むなら、返済額と同じくらいの家賃なら大丈夫かなとか、実家に頼れれば返済はなくなるし、全体の生活費も○○万円くらい抑えられるな・・など選択肢と具体的な金額にイメージします。
そして、現在の毎月の住宅ローンを入れた収支表を見たら、返済金額が○万円少なくなれば、毎月○万円家計改善するなと考えることが出来ます。
家計簿だけ見ると、住宅ローンを払う金額と家賃が同じなら、同じ収支表になり、あまり変わらないような気がします。
よく広告で見る「家賃と同じ金額で、マイホームが持てます!」というのは、この家計簿の部分だけをピックアップして主張しているということです。
しかし、それ以外にも考えるべきことがあるので、慌てて一つの情報に左右されることなく一つ一つ丁寧に考えていきましょう。
住宅ローンの申込の条件は?
家を買い取るためには、ほとんどの人が住宅ローンを借りる必要があるので、まず住宅ローンを借りることができるのか、考えてみます。
住宅ローンの申込には、条件がいくつかあります。
正社員として働いている
一つは収入面で、雇用形態が正社員であることです。
個人事業主の場合は、もちろん所得があれば申込は出来ますが、正社員のときより要件が厳しいのが一般的なので、所得が少ない個人事業主は審査が難しくなる傾向があります。
パートやアルバイトでは住宅ローンを組むことは難しいので、最終的に買い取ることが適切と判断できたら、正社員になるなど段階的に準備します。
離婚が先延ばしに出来るなら、正社員になって、収入を安定させてからの方が有利です。
もし、今すぐ離婚したいのであれば、離婚協議書に準備が整い次第買い取ることを明記して、段階的に所得を安定させ、申込できるところまで頑張ります。
健康であること
もう一つは、健康であることです。
住宅ローンを申し込むときには、団信(団体信用生命保険)「亡くなったら、もしくは特定の病気になったら、全額返済できる」という保険に必ず入らなくてはいけません。
なので、この保険に入れないとそもそも住宅ローンの申込が出来ません。
ただ、例外で今はいっている保険を担保(万が一のときに先に銀行の返済に充てる約束)にしたりする方法もありますので、諦めずに相談してみましょう。
貯金がある程度あるか
住宅ローンを借りるときには、基本的には諸経費(登記費用や銀行手数料、印紙代など結構な金額がかかります)を含めて全額融資してくれる銀行が多いです。
ですが、全額ローンで借りられる=貯金なしでもローンが借りられる、ということではありません。
当然、大きな借入をするのだから準備してありますよね?というのが銀行のスタンスです。
計画的に準備をしてきたことをしっかりと意思表示しないと、計画性のない人と思われてしまい、所得要件を満たしていても審査が通らない可能性があります。
ですから、正社員で元気だけど貯金はゼロという場合、離婚するまでに時間があれば少しずつ貯金をしてください。
ここで言う貯金とは、自分の名義だけでなく夫の名義の貯金も含まれます。
一般的には離婚したら半分もらえる権利がありますので、夫婦の共有財産の半分は離婚後自分の財産になると考えられ、それに沿って計画を立てられます。
離婚の準備の段階で、夫婦の共有財産をしっかり把握しておきましょう。
買い取る家の資産価値は?
次に、今の家の価値はどのくらいあるかを把握します。
家の価値ってどうやって決まるの?
家の価値を正確に出すのは、とても難しいことです。
実はいわゆる不動産屋さんに働いている人もちゃんとした評価が出来る人は少ない印象があります。
不動産鑑定士という専門家がいるので、その査定書をよく見るのですが、しっかりした厚い査定書の最終的な評価のところは結構な金額の幅があり、「状況により変わります・・」のような記載があります。
でも、これは当たり前のことです。
不動産の価格は日々変化します。
それは、物価と同じで、需要があれば高くなるし、需要がなければ低くなるということです。
それに加えて、自然災害や風評、大型施設や駅などの建設によって状況は更に変化します。
じゃあ、考えても仕方ないのか・・というのは少し違っていて、常にアンテナを高く持つことが大事だと思います。
どういうことかというと、自分の家がどのくらいの価値かを一度考えると、近くの土地がどのくらいで売買されてるとか、近くに広い道路が出来るなどの、情報を常に敏感に感じることが出来ます。
いつでも、売却すればこのくらいで売れるなと把握していることが大事です。
正確な金額なんて知る必要もないですし、実際は誰もわかりません。
運良く隣の人が高く買ってくれることもありますし、いい土地ですと言われたのに売りたい時に全然買い手が見つからないということもあります。
不動産の売買は、運とタイミングなので細かいこと考えても仕方ないということですね!
土地の価値はどのように決まる?
それではどのように価値を考えたらいいのか、大幅に把握します。
まず、評価するときには土地と建物に別けて考えます。
近隣の売買事例
土地の評価を考える上で、一番早くて楽な方法としては、近隣の売買事例をネットで調べることです。
「自宅の住所地 売り土地」で検索すると、近くの売り土地情報が出てきます。
地図を確認して、近い場所があればラッキーです。
坪○○円という情報が出てますので、いくつかの近隣の平均値の坪単価を自宅の土地の坪数にかけます。
例えば、近隣の相場は坪50万円で自宅の土地が30坪の場合。
坪50万円×30坪=1,500万円
近隣相場をもとにした自宅の土地の評価は、約1,500万円ということになります。
売買事例は、不動産情報サイトなどで近隣の売買事例を参考にしたり、実際に地元の不動産屋さんに行くとどのくらいで売れるかを教えてくれます。
売る方向で、その不動産屋さんにお願いする前提ですが、査定は無料でやってくれるところもあるので、足を運んで調査する価値はあると思います。
公示地価・基準地価
これは、国土交通省や都道府県が出している価格の基準です。
不動産の取引の際には参考にされることが多いです。
これも「自宅の住所地 公示地価」と検索すると近くの情報が出てきます。
調べた近隣相場と同じくらいか、チェックしておきます。
相続税路線価
相続税路線価といって、相続税の価格を計算するために決められた数字です。
国税庁のホームページに相続税路線価が載っていて、自分の家の前の道に数字がついてます。
田舎の方などは路線価ない場合がありますが、その場合は次に説明する固定資産税評価で評価するケースが多いです。
家の前の道に 130E のような記号があります。
(Eという英単語は今回はあまり関係ないので気にしないでください)
130は130,000円という意味です。
数字を1,000倍します!
わかりにくですね~。
1平米あたり、130,000円という意味です。
ですから、自宅の土地の平米数に130,000円をかけてください。
100㎡の土地で路線価が130Eなら、
自宅の土地の路線価価格は
100㎡×13万円=1,300万円
相続税路線価での土地の評価額は約1,300万円となります。
坪数でなく、平米数になります(どちらかがわからない方は、平米数×0.3025=坪数の公式を使ってみてください)
また、相続税路線価は地価の80%くらいに設定されているので、
1,300万円÷0.8=1,625万円
が実勢価格に近いということになります。
固定資産税評価
次は固定資産税評価です。
土地や建物を持っていると市に税金を納めなくてはいけないのですが、その基準となる価格のことです。
固定資産税評価は、毎年自宅に届く固定資産税の通知書の価格という欄に記載があります。
ない場合は、市役所などで固定資産税の評価証明書などが取得できるのでそれでも確認できます。
こちらは、土地と建物両方記載があります。
土地価格 1,100万円
建物価格 900万円
すると、自宅の土地の固定資産税評価額は1,100万円ということになります。
また、土地の固定資産税評価額は地価の70%くらいに設定されているので、
1,100万円÷0.7=1,571万円
が実勢価格に近いということになります。
ここまで来ると、大体坪45万円~55万円くらいかな・・と予測がついてきます。
それで一旦大丈夫です。
建物の価値はどのように決まる?
建物の評価は一般的には、固定資産税評価額で大丈夫です。
もう少し知りたいという方に、もう一つの建物評価の方法を、付け加えておくと・・
建てたときの建物の金額を22で割って、築年数分引く!という方法もあります(この22という数字は木造の建物がどのくらい持つかという年数です!)
木造でないと、違う数字になりますが、今回は木造の場合で説明します!
例えば建物の価格が2,200万円で、築10年の建物の場合。
2200万円÷22年=100万円(22年もつ木造の家は1年に100万円ごと価値が下がるということです)
2,200万円ー(100万円×10年)=1,200万円
建物の現在の価格は約1,200万円ということになります。
実際には正確に判断するのは難しいので、すぐ計算できるようにわかりやすくしてみました。
あとは、週末にポストに入る不動産のチラシなどに目を通して、近くの売買情報をチェックする癖をつけておくといいですね。
「この家は近所で築年数も同じくらいだけど、土地の価格くらいで売りに出しているな・・」とか「古い家だけど、いいハウスメーカーで建てているから、家の値段を高く設定してあるな・・」など、見る目が付いてきます。
また、「この道よりこっち側は高い金額で売買されているけど、あっち側になると安くなるな」など近隣の土地の特性も同時にわかってきます。
今の家の評価と今後変化する可能性
家全体(土地と建物)の評価
ここまできたら、大体の土地の評価と大体の建物の評価を足してみます。
大体で大丈夫です。
坪45~55万円かなと予想できたら、大体真ん中をとって50万円くらい。
建物はとりあえず固定資産税評価でもいいです。
先ほどの例に当てはめると、
近隣の売買事例で、30坪×50万円=1,500万円
建物固定資産税評価が900万円だったら、
今の家の価格は、2,400万円くらい!という感じです。
そして、1年後ごと建物価格が減っていくようなイメージを持っておくといいです。
売却したときの計算を概算でしておく
今売却したら、どうなるのかを計算します。
まず初めに、住宅ローンの残高を確認します。
銀行から返済予定表という住宅ローンの残高がわかるものがあるので、それで確認してみてください。
もし、家になければ銀行で発行してもらえます。(通帳と届出印が必要)
もし、住宅ローンの残高が2,000万円で、家の価値がおおよそ2,400万円の場合、
今、売却したら・・、諸経費(ざっと100万くらい)を引いて、300万くらい手元に残るな・・と計算します。
諸経費は、売却するときに不動産屋や銀行に払う手数料がかかるので大体100万円くらい(売却金額により変わります)と考えておけば大丈夫です。
売ってもマイナスになる場合は、焦らずに、住宅ローンが評価から100万円引いたくらいの金額(このケースだと2,300万円くらい)になるのは何年後かな・・と計算します。
それも、返済予定表の残高を確認すればすぐわかります。
あと、○年返済すれば売っても住宅ローンは残らないんだなとわかります。
全体の価値を見たときに、土地の価値が低すぎたり、住宅ローンの割合が多すぎるときは、思いっ切って買い取らないという選択肢も持ちましょう。
買い取ることはしたくないけど、今の家に子供と住みたい!というときは、離婚協議書(公正証書が望ましい)に明記しておけばそのまま住み続けることはできます。
具体的には、〇年△月まで妻が住宅ローンを負担する、期日が来たらその後は夫が住宅ローンを負担するのような形で期日を決めてそのままの名義で住むこともできます。
連帯債務の場合は、期日が来たら、妻の持ち分を夫が買い取るということを明記しておきます。
(どちらの場合も、銀行には状況説明と対応を依頼する必要がありますので相談することを忘れずにしてください。)
プロのアドバイスをもとに自分で判断する
今まで話してきたように、不動産を評価することはとても難しいので、銀行担当者や不動産業者など信頼できる人がいれば聞いてみるといいと思います。
自分だけで判断せず、色々な相談窓口を利用することはとても効率のいい方法です。
ハードルが高いように感じますが、不動産に関わっている人は、日々そのような仕事をしているので、たくさんの情報を知っていますし知識のある人が多いので、何でも聞いてみることをお勧めします。
貸借対照表(B/S・・もっているお金と借りているお金のバランス)を簡単に作ってみる。
計算をしたら、バランスシート(資産と負債のバランスがわかるもの)を作ってみます。
作り方は簡単で、
左側に資産、右側に負債と差額(純資産=今自分の本当に持っているお金)の表を作ります。
現金 | 2,000,000 | 住宅ローン | 20,000,000 |
投資信託 | 2,000,000 | リフォームローン | 2,000,000 |
学資保険 | 3,000,000 | ||
車 | 300,000 | ||
家 | 24,000,000 | 純資産 | 9,300,000 |
合計 | 31,300,000 | 合計 | 31,300,000 |
このように、全ての資産から負債を差し引くと、純資産(最終的にもっている資産額)は930万円ということになります。
住宅ローンが多くて、純資産がマイナスになることもありますが、バランスシートは住宅ローンを返済していくと変わっていきますので、落ち込まずにしっかりと把握することが大事です。
また、現金、投資信託、学資保険などのすぐに現金化出来る資産がいくらあるかも把握します。
(このケースだと、700万円はいつでも現金化出来るとわかります)
このように、全体のバランスを見て今持っている資産と負債を把握することがとても大事です。
そうすると、家計簿でマイナスでも、すぐに現金化できる貯金が今700万円あるから、2、3年はなんとかなるなと心の余裕ができます。
その間に、収入を上げるために、資格を取ったり、転職活動をしたりする時間が確保できるということになります。
反対に、収支もマイナスで貯金もないというときは、すぐに行動してはいけない時期です。
焦らずに少しずつでもお金を貯めていきましょう。
まとめ
マイホームを買い取ると決めても、たくさん借金して大丈夫か不安になると思います。
しかし、しっかりと状況を把握することが何よりも大事です。
計算した上で、住宅ローンの残高が評価と比較して多すぎたり、近隣の売買事例を見たら土地の価格がとても低い・・など、買い取らない方がいいケースもたくさんあります。
少し面倒ですけど、必ず自分のためになりますし、不安が少なくなるはずです。
離婚は手続きが多くて本当に大変ですけれど、家の買い取りなど大きな決断に関わる大事なことはそのままにせず、しっかりと解決して納得して前に進みたいですよね。
一歩ずつでいいので、一緒に頑張っていきましょう!